2021.02.27

104-20 舞洲シーサイドプロムナード(大阪市)

10420ksimsp

ここ「舞洲(まいしま)」は、大阪市の西端に位置する此花区の地先水面に廃棄物処理・埋め立て場として造成された面積約220haの人工島で、当サイトでかなり昔に取り上げた天保山ハーバービレッジユニバーサル・スタジオ・ジャパンよりもさらに西にあります。

島の東側は物流・環境ゾーンと位置づけられ、多くの民間企業の物流拠点が誘致されている他、オーストリア・ウイーン生まれの芸術家・画家・建築家であるフンダートヴァッサーがデザインした2つの奇抜な建物、清掃工場と下水汚泥処理施設が立地しています。一方、西側はスポーツ・レクリエーションゾーンという位置づけで、1997年の第52回国民体育大会に向けて野球場や体育館等多くのスポーツ施設が建設され、招致が失敗に終わった2008年の大阪オリンピック構想ではメイン会場とされていました。現在、プロ野球パ・リーグのオリックス・バファローズ、Jリーグのセレッソ大阪、Bリーグのエヴェッサ大阪といったプロ・スポーツ・チームがここを活動拠点としています。公園や緑地が整備されている他、宿泊施設、キャンプ場、バーベキュー・ガーデン等もあります。

画像はそんな島の南岸の風景で、海辺に沿って長さ600mのボードウォークが設けられています。正面に見えるのは「夢舞大橋」で、これを渡った対岸は2025年開催予定の「大阪・関西万博」の会場となり、昨今話題のIR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致も検討されている「夢洲(ゆめしま)」です。画面右手奥には「大阪ワールドトレードセンタービルディング」として建設され、2010年大阪府に譲渡され「大阪府咲洲庁舎」となった地上55階、高さ256.0mという国内第4位の超高層ビルが小さく見えています。

本来はウォーターフロントのなかなか気持ちのいいロケーションのはずで、夜景スポットの「穴場」としても知られているようなのですが、人気(ひとけ)がない上に財政難もあってかご覧のとおりボードウォークや舗装のメンテナンスが十分でなく(そういえば同じ大阪府内の「りんくうタウン」駅前のペデストリアン・デッキも酷かったですねぇ…)、少し荒れた印象を受けます。まあ、定住人口のいないこの島全体がだだっ広い土地を持て余している感じで、車があればともかく、歩き回るにはあまり快適なスケールではない、典型的な「埋立地」といった感じなのですが。

 

さて、今回のシリーズですが、かなり長丁場になりそうなので、ここまでを前半として一旦お休みしたいと思います。後半は4月に再開予定です。それまでどうぞ、みなさまお元気で。

 

| | コメント (0)

2021.02.25

104-19 あべのキューズタウン(大阪市)

10419ksiaqt

前回(104-18)展望台「ハルカス300」を取り上げた「あべのハルカス」は近鉄南大阪線のターミナルである「大阪阿部野橋駅」直結の施設ですが、JR大阪環状線・関西本線・阪和線とOsaka Metro御堂筋線・谷町線の「天王寺駅」、さらに阪堺電気軌道上町線「天王寺駅前駅」(画面手前に見えています)にも隣接しており、付近は4駅7路線が集まる大阪の南の一大交通結節点を形成しています。そして交通至便なこの「天王寺・阿倍野」エリアは梅田、心斎橋・難波に次ぐ大阪第三の繁華街でもあり、一帯は百貨店や映画館などが立地する近畿地方でも有数の商業集積地となっています。

そんな街に2011年にオープンしたのが、今回ご紹介する「あべのキューズタウン」です。これは大阪市が40年以上かけて進めてきた、総面積約28haという西日本最大規模(そして約2,000億円にのぼるという損失も巨大…)の「阿部野橋再開発事業」における目玉商業施設で、東急不動産が運営し東急ハンズ、「SHIBUYA109ABENO」、イトーヨーカドー他約250の専門店が入居する「あべのキューズモール」と、再開発前から当地に存在した商店街の店舗を中心に約70店が入居し、立ち飲み屋などの居酒屋街があって商店街時代の雰囲気を感じることができるという「ViaあべのWalk」から構成されています。

私がこの街に来たのは「あべのハルカス」目当てで、たまたま目にしたこの施設を遠くからカメラにおさめただけだったのですが、自然環境が感じられるオープン・モールとし、低層におさえた施設構成となっているようで、大通りに向けて小さな箱を少し雑に並べたような外観がかわいらしく感じられました。あとは、関西で東急グループやヨーカドーといった関東資本の小売業の見慣れた看板を目にすると、私はちょっと嬉しくなってしまいます。

| | コメント (0)

2021.02.23

104-18 ハルカス300(大阪市・あべのハルカス)

10418ksiahk

2014年に開業した、現在日本で最も高い(300m)超高層複合商業ビル「あべのハルカス」の展望台「ハルカス300」の様子です。

展望台は5860階の3層にわたって設けられ、全面ガラス張りです。58階には「天空庭園」があり、60階までの吹き抜け構造になっています。風は遮られていますが屋根はなく、外気を肌で体感できる屋外広場です。そして、60階の屋内回廊「天上回廊」は、画像からわかるとおりこの吹き抜け空間をぐるりと取り囲むように配置されています。両側がガラス張りの回廊は自分が空中を散歩しているような感覚が味わえるとともに、吹き抜けの反対側を見ても人が空中を歩いているように感じ、ちょっと不思議です。

| | コメント (0)

2021.02.21

104-17 「JO-TERRACE OSAKA」と大阪ビジネスパーク(大阪市)

10417ksiobp

ついに大阪市内までやってきました。画像は大阪の中心に位置し、大阪城の天守閣を中核に据えた都市公園・大阪城公園内で撮ったものです。

園内の北東部にあたる、JR大阪城公園駅からスポーツやコンサートの会場として有名な大阪城ホールにかけてのこのエリアは、以前は寂しい空間で、周辺には食事ができるような店も少なかったそうです。そこで、来園者の利便性を高め、公園の魅力を創出し、新たな賑わいを創ることを目指して市が事業者を募集し、広告代理店の電通をはじめとする大手企業で構成される「大阪城公園パークマネジメント株式会社」が2017年に開業させた商業施設が、画像手前の「JO-TERRACE OSAKA(ジョー・テラス・オオサカ)」です。7棟に分かれた1~2階建ての建物に、飲食店を中心に物販店、インフォメーション施設など22のテナントが入居しています。施設の整備に至る経緯は最近当サイトでご紹介した熊本市の「桜の馬場 城彩苑 桜の小路」、そして名古屋市の「金シャチ横丁」とそっくりなのですが、建築的には「江戸時代の城下町風」といった直接的なわかりやすい表現とせず、「和」を意識しつつもより現代的な外観となっています。

そして、背後に建ち並ぶ高層ビル群は「大阪ビジネスパーク」(OBP)のものです。ここは寝屋川と第二寝屋川、JR大阪環状線に挟まれた26haの三角形の土地です。戦前は東洋一の規模を誇ったという軍事工場「大阪砲兵工廠」の一部で、空襲を受け長らく更地となっていましたが1970年代から再開発計画が始動し、1986年にまち開きを果たしました。現在は数多くの大手企業がオフィスを構える他、ホテルやホールも立地し、昼間人口は約100,000人にのぼるという一大ビジネス拠点となっています。ビル群はそれぞれ高さも形も、向きもまちまちで統一感はないのですが、その多様性が逆に自然発生的な都市であるかのような活力を感じさせてくれます。

その中で最も私の印象に残ったビルは、地区西端(画面では左端)の、水辺に突き出した岬のような象徴的な場所に建つ、1990年開業の「クリスタルタワー」です。シンプルさを極限まで追求したかのような直方体の外観は、特に短辺方向から見るとスリムなそのプロポーションが際立ちます。そして全面がガラス張りのカーテン・ウォールになっているのですが、そこに映し出される空や雲の姿が実際以上に美しく感じられ、「クリスタル」の名にふさわしくキラキラと輝いて見えます。建築的な評価も高いようで、国内の優秀な建築作品に与えられる「BCS賞」や「大阪まちなみ賞大阪市長賞」、「グッドデザイン賞」などを獲得しています。

| | コメント (0)

2021.02.19

104-16 「ラピート」の車内(南海電気鉄道)

10416ksirpi

前回(104-15)から取り上げている南海電鉄の関西国際空港アクセス特急「ラピート」専用車両「50000系」の、内部の画像です。

外から見ると窓が楕円形なのがこの車両の特徴の一つですが、楕円は窓だけでなく、車内外の各所に共通のデザイン・エレメントとして使用されています。まず天井は高くドーム状になっているので、車内全体の断面が縦長の楕円形に感じられます。半楕円形のアーチが連続する空間はヨーロッパの大聖堂の側廊の内部のような、古典的な建築が持つ荘厳さが感じられます(この駅の天井にも似ていると感じました)。座席の上には旅客機のように蓋を開閉する収納が設置され、空の旅が陸上にも続いているかのような演出なのですが、よくよく見るとその取っ手も楕円形です。さらに客室とデッキを仕切る扉とその窓も楕円形です。

そして前回の画像で見た方がわかりやすいかもしれませんが、車内の照明は私が好きな電球色の蛍光灯が、光の円柱をイメージしたアクリル製の器具に入って吊り下げられており、車内に高級感をもたらしています。

| | コメント (0)

2021.02.17

104-15 「ラピート」の外観(南海電気鉄道)

10415ksirpe

今回は和歌山県と大阪府を結んでいる南海電鉄の列車を取り上げたいと思います。

「速い」という意味のドイツ語から命名された「ラピート」は、1994年に開港した関西国際空港へのアクセス特急として難波駅~関西空港駅間で運行を開始した列車ですが、その専用車両であるこの50000系電車の登場は衝撃的でした。先頭正面には「センターピラー」という運転士の視界を遮って邪魔になりそうな「飾り角」が付き、前照灯等の灯火類はライオンのたてがみのような部分に埋め込まれるなど、「鉄人28号」などとも呼ばれているらしいその外観は漫画を実写化したようなこれまで見たこともない現実離れしたもので、現代的な軽快さを全く感じさせないところが逆に斬新でした。

この車両は「レトロ・フューチャー」(過去のSF作品などで描かれた未来像)をコンセプトとして、ハイテクなイメージを抑え鉄道車両本来の重量感を重視し、戦前の大陸横断鉄道(こんな車両にもちょっと通じる部分がありますね)や「弾丸列車」のような力強さを追求した結果、このようなデザインになったそうです。21世紀の感覚からすれば重苦しい、深みのある濃紺の外部塗色は海上空港の「空と海のきらめき感」を表現したとのことです。また、側面のデザインのポイントとなっている楕円窓は航空機のイメージから生まれたもので、ほぼ全ての窓を楕円形で統一した車両は日本初だそうです。これだけクセが強い車両ですから、鉄道ファンが選ぶ「ブルーリボン賞」を南海電鉄として初めて受賞したというのも頷けます。

残念ながら国際空港のアクセス特急という列車の特性上、COVID-19の感染拡大によって利用者が大幅減となったため、昨年4月以降朝夕を除いて多くの便が運休となり、現在のところ乗車チャンスや目にする機会も減ってしまっているようですが…。

次回は、この50000系電車の内部をご紹介します。

| | コメント (0)

2021.02.11

104-14 野奈浦広場(和歌山県・友ヶ島)

10414ksitnh

前回(104-13)は和歌山市内の人工島でしたが、今回は自然島の風景をご紹介します。

紀伊半島と淡路島との間に横たわる紀淡海峡には4つの無人島群があり、それらは「友ヶ島」と総称されています。今回はその中の「沖ノ島」の風景をご紹介します。

沖ノ島は明治時代から戦前まで旧日本軍の要塞施設とされ、当時を偲ばせる砲台跡等が点在しています。現在は瀬戸内海国立公園に指定された観光地となっており、砲台跡等を巡るハイキング・コースが整備され、豊かな自然の中で磯遊びやキャンプ等が楽しめます。関東でいえば東京湾内唯一の自然島で、同様に防衛拠点としての歴史を持つ横須賀市の「猿島」のような場所と言えるでしょうか。

島へは市内北西部にある「加太港」から20分でアクセスできますが、そのフェリーが発着する桟橋の前に広がるのがこの「野奈浦広場」です。「広場」と言っても人工的な感じはなく、おそらく山がちな島における数少ない平らな土地を「広場」と呼んでいるのでしょう。もしかしたら桟橋もわざわざこの場所を選んで築いたのかもしれません。戦前は軍事施設群の中枢だったそうで、現在は管理事務所等が置かれ、昔も今も島の玄関口として機能しているようです。

そんな島の顔となる「広場」は芝が茂り、クロマツの木々が陽射しを遮って、涼しい潮風が吹き抜ける避暑地のような雰囲気で、キャンプ場に適していそうなロケーションです(実際には他の場所がキャンプ場として指定されているようです)。カフェも併設されており、フェリーが来るまでパラソルの下で紅茶を飲みながら、打ち寄せる波の音とスピーカーからたまたま流れていたマライア・キャリーを聴いて過ごした時間は、とても快適でくつろげるものでした。

| | コメント (0)

2021.02.09

104-13 和歌山マリーナシティ(和歌山市)

10413ksiwmc

「和歌山マリーナシティ」は市南西端に位置し、万葉集にも読まれ古くから風光明媚な地として知られる和歌浦湾に浮かぶ人工島で、1994年に開催された「世界リゾート博」を機に開発されました。水面を含めた開発総面積は65haで、昨今話題の統合型リゾート(IR)の候補地にもなっています。島内はヨット・ハーバーを中心に、ヨーロッパの街並みやアトラクションが楽しめるテーマパーク「ポルトヨーロッパ」、毎日マグロの解体ショーを開催している観光魚市場「黒潮市場」、目の前に海が広がる「紀州黒潮温泉」、「海釣り公園」など、アミューズメント施設が集積しています。

画像右側の黄色い外観の建物は明るく爽やかな南欧風リゾートのイメージで建てられたというリゾート・ホテル「和歌山マリーナシティホテル」で、よく見ると船が通れる水路を跨ぐように造られています。

その奥には浴室から湾やヨット・ハーバーを一望できるというオーシャン・ヴューの高層リゾート・マンションが何棟も建てられています。建物群は海沿いのイメージからかスカイラインも、そして平面的な配置も波を描くように建てられています。外壁の色は白を基調としつつ棟によってイエロー、ブルー、ピンクなどのパステル・カラーで塗り分けられていて、米国・マイアミビーチのアール・デコ地区を思わせる南国風の爽やかで楽しげな景観を形成しています。

| | コメント (0)

2021.02.07

104-12 三年坂通り沿いの風景(和歌山市)

10412ksisnz

前回(104-11)は和歌山城の東側でしたが、今回は南側の風景をご紹介します。

ここは画像右側(北)の城(現在の和歌山城公園)と、その左側(南)の三の丸跡との間に造られた切り通しで、こんな場所を彷彿とさせる、無電柱で街路樹が爽やかな幹線道路です。

この道を歩いていて、気になる建築を2つ見つけました。一つは画像左側の、外壁からの突起がやたらと目立つ、巨大で煩い「和歌山県立近代美術館」で、バブル末期に黒川紀章氏が奥に隣接する「和歌山県立博物館」と一体的に設計されたもので、「公共建築百選」にも選ばれているそうです。

もう一つは画像奥に建つ「和歌山県庁南別館」で、「耐震ラティス」と名づけられた斜めの格子状の構造体が建物の外周を取り囲んでいる姿が珍しく、目を引きます。県の防災拠点施設でもあるこちらの建物も、有名建築家・高松伸氏らによる設計です。

| | コメント (0)

2021.02.05

104-11 和歌山城東堀沿いの風景(和歌山市)

10411ksiwjh

奈良県の次は、お隣和歌山県・和歌山市内の風景です。

御三家の一つ、紀州徳川家の居城だった和歌山城は、市中心部に位置する標高約50mの虎伏(とらふす)山頂に建造された平山城で、画像左側の本丸・二の丸が公園として一般開放されています。城は三方を堀に、南側を空堀に囲まれていますが、この「東堀」が最も幅が広く面的な水辺となっています。画像右側は広大な三の丸の一部で、中央郵便局や、地方裁判所、地方合同庁舎といった公的な施設が建ち並んでいます。

この街を訪れて、(和歌山市に限らず)私は「城下町」が好きなんだな、と改めて気づかされました。街の中心に「城の天守閣」というシンボルとなるランドマークがあって、城跡は水に囲まれた緑豊かな広いオアシスを都心部に提供し、昔ながらの石垣が歴史を感じさせてくれます。城の周りはたいていこのような官庁街や文教地区となっていて、商業中心とは異なる、威厳と落ち着きのある都市景観を形成しています。街は全体的に整然と区画されて街路網に明確な秩序が感じられ、古くから残る数々の町名が豊富なエピソードを語ってくれます。そんな城下町の人々は、自分が「世界」の中心に暮らしていることを日々実感でき、伝統と文化のある街に誇りを持てそうだな、と私には羨ましく思えるのです。

| | コメント (0)

2021.01.30

104-10 天理駅前広場コフフン(奈良県)

10410ksitek

駅前広場に子供のための遊び場が造られた、しかもそれが巨大なアート作品のようで、景観としては子供っぽくなっていない、そんな事例として紹介され、インターネットで画像を検索してみたらとてもよさそうだったので、奈良市から足を延ばしてわざわざ訪れてみたのがここ天理市で、宗教法人・天理教の本拠地として知られる街です。

「コフフン」という愛称がつけられたこの駅前広場ですが、結論から言えば、どうやっても美しく見えず、がっかりしました。広場の周りを美しくない雑居ビルが取り囲んでいて、地上レヴェルで写真を撮ろうとするとどうしてもその乱雑な背景が入ってしまうというのがその主な理由です。近くの立体駐車場の屋上や駅のプラットフォームといった少し高い所から撮ってみてもあまり変わらず…。改めてインターネット上の画像を確認してみるとかなり上空から撮ったものがほとんどのようでした。市民の憩いの場としてはよく利用され、親しまれているようですが、カメラを向けようという気にはならず…。「いい景観」と「美しい景観」は違うのかもしれない、景観の美しさなんて誰も求めてないのかな…などと最近改めて感じるようになっています…。

2017年にオープンしたこの「コフフン」は、約6,000㎡という広さを持つJR・近鉄の天理駅前広場に、市内に約1,600点在する「古墳」を想起するような、野外ステージや大型遊具、カフェやレンタサイクル、観光案内などの機能を備えた円形の造形を複数組み合わせて配置し、起伏に富んだランドスケープをつくることで、山々に囲まれた奈良盆地という地理的特徴を表した…のだそうです。

| | コメント (0)

2021.01.28

104-9 猿沢池のライト・アップ(奈良市)

10409ksisil

「猿沢池」と言えば、確か古文の教科書に出てきたような…どんな話だったかは全くもって憶えていないのですが…奈良公園内にある周囲360mという小さな池で、興福寺が行う「放生会(ほうじょうえ・捕獲した魚等を放し殺生を戒める宗教行事)」のために749年に造られました(さすがに奈良の歴史の古さは他の街とは桁が違う!)。寺は前回(104-8)ご紹介した三条通りを挟んだ北側に位置し、木々の影には五重塔が隠れています。水面に塔と湖畔の柳が映るその姿は評判が高く、池の上空に月が出る「猿沢池月」は古くから「南都八景」(奈良市の東大寺・興福寺周辺に見られる優れた風景)の一つに選ばれています。

そんな名勝の魅力を活かすべく、猿沢池では通年でライト・アップが行われているようで、三条通りに沿って等間隔に立ち並ぶ柳の木々がイエローとグリーンの光で照らされ、その姿を水面に映しています。私が訪れた夜の猿沢池はほの暗く、静かで、涼しく、秋の深まりを感じる風景でした。

| | コメント (0)

2021.01.26

104-8 三条通り(奈良市)

10408ksissm

前回(104-7)ご紹介したJR奈良駅から奈良公園までの約1.2kmにわたって奈良市の中心市街地を東西に貫く目抜き通りです。沿道には興福寺や猿沢池(次回取り上げる予定です)といった観光名所があり、春日大社の参道ともなっていて、並行する国道369号同様、東へ向かって身体が負担を感じない程度に微かな傾斜のついた上り坂となっています。この通りは古くは平城京の三条大路にあたり、つまり古代からの都市軸を受け継いでいることになります。

ここは奈良市を代表する商店街として、地元向け老舗商店、金融機関、ホテルなどが建ち並ぶ一方、観光客向けの土産物店や食べ歩きのできる飲食店等も多く、沖縄・那覇の国際通りのように華やいで、浮かれた雰囲気も感じられます(画像は早朝のものなので店が開いておらず、人通りもないですが)。

この通りでは近年、中心市街地におけるシンボル・ロードという位置づけにより、歩行者の安全と、景観に配慮した整備が行われ、無電柱化工事や沿道施設の景観規制も進められました。通りの西側500m弱のこの画像の区間においては、道路幅員が8mから16mに拡幅されましたが、車道は一方通行の1車線のみとし、その分両側の歩道を4.5mずつ確保して、かなりの余裕を持たせています。歩道と車道の間に段差はほとんどないので、通りの反対側へ渡る際に感じる心理的なバリアがありません。というか、日曜祝日の昼から夕方にかけては全面的に車両通行止になっているようです。歩道と車道の一部は大きめの天然石で舗装されています。また、ボラード(車止め)は可動式で、祭りの行列の際には1.5m外側に動かして車道を拡げているそうです。ここが完全な歩行者天国となれば、当サイトでかなり昔にご紹介した米国・サンタモニカの「サード・ストリート・プロムナード」のような質の高い商業空間ができあがるのでは、などと感じました。

| | コメント (0)

2021.01.24

104-7 JR奈良駅の夜景(奈良市)

10407ksijns

「けいはんな」の「けい」から「な」へ移動して、奈良市内の風景のご紹介です。

奈良市中心部へのアクセスは近鉄奈良駅の方が便利で乗降客数も多いのですが、JRを利用する場合はそこから1kmほど離れたこちらの駅が玄関口となります。

現在駅周辺は高架化されており、画像左奥に3代目の駅舎がありますが、2003年までは手前の仏教寺院を思わせるエキゾティックないでたちの、いかにも「古都!」という感じの建物が駅舎として使われていました。「近畿の駅百選」に選ばれ、近代化産業遺産にも認定されているこの駅舎は1934年に2代目として完成したもので、方形屋根に相輪(仏塔などの屋根から突き出した金属製の装飾)を持つ和洋折衷様式の建築となっています。高架化事業にともない取り壊される予定だったのですがその歴史的価値から反対の声が根強かったこともあり、曳家によって元の位置から18m移動されたうえで保存されることとなりました。現在は市の総合観光案内所として活用され、広々とした東口駅前広場の一角を占め存在感を放っています。そして夜は障子を思わせる格子窓から漏れるその灯りが暖かく感じられます。

| | コメント (0)

2021.01.18

104-6 精華大通り沿いの風景(京都府)

10406ksisod

前回(104-5)に引き続き、けいはんな学研都市、精華・西木津地区の風景です。

精華大通り沿いには数多くの大手企業の研究施設が立地しています。そのほとんどが関西を発祥とする企業で、それが関西財界一丸となってこの学研都市を発展させようという姿勢の表れなのか、それとも「ご近所づきあい」で仕方なく進出しているのか、その辺の事情はよくわかりませんが…。それはともかく、これらの施設は通り沿いの広い敷地に、道路や両隣から十分な距離をとって、野外美術館の彫刻のようにお行儀よく陳列されているように見えます。

画像のこの施設は、比較的最近建てられたある大手金融機関の事務センターです。集客を必要としない建物の形態は単純な立方体で外観には何の飾り気もなく、無機質でそっけない印象がこの人工的な街の風景を象徴しているように思えます。

| | コメント (0)

2021.01.16

104-5 けいはんなプラザと精華大通り(京都府)

10405ksikhn

京都市内から南下して、「関西文化学術研究都市」、「精華・西木津地区」の「精華大通り」沿いの風景を取り上げようと思います。順を追って解説していきましょう。

「けいはんな学研都市」という愛称で、あるいは単に「学研都市」と呼ばれる「関西文化学術研究都市」は、京都・大阪・奈良の3府県境周辺の丘陵地帯において、1987年に公布・施行された「関西文化学術研究都市建設促進法」に基づき、創造的な学術・研究の振興を行い新産業・新文化などの発信の拠点・中心となることを目的として建設・整備が進められている新都市で、東の筑波研究学園都市とともに国家的プロジェクトに位置づけられています。総面積は約15,000haで、その中に12の「文化学術研究地区」(約3,600ha)がクラスター(残念な形で広く知られるようになった用語ですが、ブドウなどの「房」を意味しています)型に分散配置され、現在150を超える研究施設、大学施設、文化施設などが立地して約1万人の就業人口(研究者、職員等)を有するとともに、住宅地としても開発され複合的な都市づくりを目指しています。

その学研都市において中心地区と位置づけられているのが、精華町と木津川市にまたがる総面積506ha、計画人口25,000人の「精華・西木津地区」で、総合公園の「けいはんな記念公園(京都府立関西文化学術研究都市記念公園)」や「国立国会図書館関西館」といった開発の目玉になるような施設が立地しています。画像に映っているのも1993年に竣工・オープンした学研都市の中核的施設として、文化・学術・研究や新産業の交流・発展の場を提供している「けいはんなプラザ」で、オフィス・ラボスペース、貸しホール・会議室、ホテルといった機能を有し、巨大な日時計を中心とした広場はイヴェントの開催に利用されているようです。

「都市景観100選」にも選定されている精華・西木津地区を東西に貫くメイン・ストリートが、約1.5kmにわたってメタセコイア並木が続く幅員50mのこの「精華大通り」で、片側2車線の車道に加え、画像のように歩道がゆったりと確保され、水景施設も造られています(水は流れておらず、雑草が生え放題ですが…)。新しく開発された緑豊かで低密な都市の、車ばかりが通り過ぎて人の姿がほとんど見えない、だだっ広くひたすら真っ直ぐに伸びる道を何百mも歩き続けて、精神的に辛かったことが私はあるのですが、同じような条件のこの通りを端から端まで歩いてもそれほど苦痛ではなかったのは、訪れた季節が秋で、木々が所々色づいていて目を楽しませてくれたからでしょうか。

| | コメント (0)

2021.01.14

104-4 宇治川派流と月桂冠大倉記念館(京都市伏見区)

10404ksifsm

今回は京都・伏見の風景をご紹介いたします。

「伏見…」といえば「…稲荷大社」が有名ですが地域の中心はそれよりさらに南で、京都の中心部からは数km南下した所にあります。1931年に京都市内に編入されるまでは独立し、異なる歴史を歩んできた都市でした。安土桃山時代に豊臣秀吉が伏見城を中心とした城下町を整備して一大政治都市となり、江戸時代には淀川水運の重要な港町、旧大坂街道の宿場町として栄えました。幕末期に坂本龍馬をはじめとする討幕の志士たちが活躍した地としても知られ、彼が定宿としていた「寺田屋」が現在も残っています。街なかには水路が張り巡らされ、良質な地下水に恵まれたことから酒造りが盛んで、昔ながらの酒蔵や船宿が建ち並び、誰もがイメージするようないわゆる「京都」とはまた違った雰囲気があります。

画像は、そんな伏見を代表するような風景です。手前の「宇治川派流」は伏見城築城の際、建築資材を運ぶために造られた運河で、桜の名所となっているようです(私が来た時はまだ咲いていませんでした)。水辺に浮かんでいるのは「十石舟(じっこくぶね)」で、江戸から明治にかけて大坂と伏見の間を行き来した輸送船を屋形船仕様とし、伏見の街を巡る遊覧船として運航しているものです。そして対岸の、煙突と連続する三角屋根と色褪せた板壁がいい感じの建物は、有名酒造会社の企業博物館である「月桂冠大倉記念館」で、1909年築の酒蔵は近代化産業遺産の認定を受けています。

こんな絵になる場所が観光客で混雑することもなく(シーズン・オフだったからかもしれませんが)、普通の市街地の中にさりげなく、ひっそりと佇んでいるところに、長い歴史を有する街の奥深さを感じます。

| | コメント (0)

2021.01.12

104-3 鴨川デルタ(京都市)

10403ksikgd

滋賀県に続いて、京都府・京都市内の風景です。

北東から流れる「高野川」と北西から流れる「加茂川」(画像右側)がY字型に合流して、鴨川が始まる場所には世界遺産「古都京都の文化財」の1つとして登録されている下鴨神社があり、南に向かって鋭角に突き出したその先端部分が公園となっています。ここがいわゆる「鴨川デルタ」です(河口にできた三角州でもないのに形状だけでこう呼ばれているのはちょっと違和感がありますが)。

地図上で見ているだけでも京都の街にとって象徴的な場所のような印象を受けますが、実際に訪れると風光明媚な市民の憩いの場となっており、近年はいくつかの映画のロケ地やアニメの舞台としても有名なのだそうです。画像をよく見ると水面すれすれに飛び石が置かれ、多くの人が川を渡って楽しんでいるのがわかるかと思いますが、これは1993年に川底の保護と親水空間の形成を目的に設置されたという比較的新しいもので、83基並んでいるそうです。

鴨川は京都という国内屈指の大都市を流れる河川ですが、河原に等間隔でカップルが並んでいたり、川沿いの料理店や茶屋が川の真上に「納涼床(川床)」を設けていたりと、人々の生活にとって極めて身近な存在であるように感じられます。市街地との高低差や川幅、水量等が大きすぎず、人間にとってちょうどいいスケール感だからなのでしょうか。

| | コメント (0)

2021.01.06

104-2 びわ湖テラス ノーステラス(滋賀県大津市)

10402ksibtn

前回(104-1)ご紹介した「びわ湖テラス」が好調を受けてその規模を2倍に拡張し、2018年に誕生した新エリアがこの「ノーステラス」です。前回の「グランドテラス」からは琵琶湖を真正面に望めましたが、こちらは建物の脇から湖の北側の眺めが楽しめ、天気がいい日には遠く北アルプスや中央アルプスまで見えることもあるそうです。私が訪れた時は「グランド…」に比べてこちらはやや人が少なく、より静かでプライヴェートな感覚を楽しめました。そして「インフィニティラウンジ」とのサインが出ていますが、ハイ・シーズンにはここにパラソルのついた限定20席、45分間完全予約制のソファー席が設けられ、食事とドリンクとセットという料金体系になっているようです。

| | コメント (0)

2021.01.04

104-1 びわ湖テラス グランドテラス(滋賀県大津市)

10401ksibtg

関西圏の風景を、まずは滋賀県からご紹介してきます。

日本一広い琵琶湖を遥か眼下に望む絶景スポットに柵はなく、足元にインフィニティ・プールのような水盤が張られてそれがそのまま湖面とつながっているかのように感じられ、さらに湖と空の境目もわからないくらい溶け合って、どこまでも透き通った「青」が広がるこの世のものとは思えない神秘的な光景です。

ここ「びわ湖テラス」は、標高1,108mの打見山頂に設けられたリゾート施設で、「グランドテラス」はそのシンボル的な空間です。全体にウッド・デッキが敷きつめられる中、ゆっくりと散策したり、ソファーやチェアでくつろいだり、カフェで食事をしたり、何より思い思いのポーズをとって写真撮影を楽しんだりできるようになっています。元々ここは「びわ湖バレイ」という、京阪神地区から最も近く関西では老舗的存在の有名なスキー場で、ジップ・ライン、アスレチック、ドッグ・ランといったシーズン以外も楽しめるアクティビティも充実していたのですが、2016年にこの施設がオープンすると「フォトジェニックな写真が撮れる」とインスタグラム等で話題となり、来場者数が大幅に増え、現在も人気を博しています。眺望抜群という恵まれた条件の立地に、SNS映えする今風の空間を設えるという、時流を捉えた企画力の勝利といったところでしょうか。

ちなみに、この山頂には日本最速の全面ガラス張りロープウェイでアクセスするのですが、リゾート施設そのものも以前ご紹介した静岡県の「富士見テラス」と同じロープウェイ・メーカーの関連会社によって運営されているようです(名前も似ていますね)。

| | コメント (0)

«2021年の新シリーズ 「関西の風景」