104-4 宇治川派流と月桂冠大倉記念館(京都市伏見区)
今回は京都・伏見の風景をご紹介いたします。
「伏見…」といえば「…稲荷大社」が有名ですが地域の中心はそれよりさらに南で、京都の中心部からは数km南下した所にあります。1931年に京都市内に編入されるまでは独立し、異なる歴史を歩んできた都市でした。安土桃山時代に豊臣秀吉が伏見城を中心とした城下町を整備して一大政治都市となり、江戸時代には淀川水運の重要な港町、旧大坂街道の宿場町として栄えました。幕末期に坂本龍馬をはじめとする討幕の志士たちが活躍した地としても知られ、彼が定宿としていた「寺田屋」が現在も残っています。街なかには水路が張り巡らされ、良質な地下水に恵まれたことから酒造りが盛んで、昔ながらの酒蔵や船宿が建ち並び、誰もがイメージするようないわゆる「京都」とはまた違った雰囲気があります。
画像は、そんな伏見を代表するような風景です。手前の「宇治川派流」は伏見城築城の際、建築資材を運ぶために造られた運河で、桜の名所となっているようです(私が来た時はまだ咲いていませんでした)。水辺に浮かんでいるのは「十石舟(じっこくぶね)」で、江戸から明治にかけて大坂と伏見の間を行き来した輸送船を屋形船仕様とし、伏見の街を巡る遊覧船として運航しているものです。そして対岸の、煙突と連続する三角屋根と色褪せた板壁がいい感じの建物は、有名酒造会社の企業博物館である「月桂冠大倉記念館」で、1909年築の酒蔵は近代化産業遺産の認定を受けています。
こんな絵になる場所が観光客で混雑することもなく(シーズン・オフだったからかもしれませんが)、普通の市街地の中にさりげなく、ひっそりと佇んでいるところに、長い歴史を有する街の奥深さを感じます。